キャッシュ・フロー計算書だけでは銘柄選定は難しい
今回は、キャッシュ・フロー計算書を銘柄選定にどう活用するかを解説します。
まず前提として、キャッシュ・フロー計算書だけで銘柄選定するのは難しいことを理解しておきましょう。
もともとキャッシュ・フロー計算書は、昔の決算書にはなく、貸借対照表と損益計算書だけで企業分析を行っていました。しかし、それでは粉飾決算や損益と現金の不一致により企業の実態を正確に把握できないことが多く、新たに導入されたのがキャッシュ・フロー計算書です。
つまり、キャッシュ・フロー計算書は 貸借対照表や損益計算書を補完する役割 であり、銘柄選定の際も単独ではなく、併用して判断することが重要です。
安全性重視の銘柄選定
上場企業であっても、倒産することがあります。倒産すると株価はほぼゼロになるため、個人投資家はリスクの高い銘柄を避けたいものです。
安全性=企業が倒産する可能性 と考え、以下のポイントを確認します。
貸借対照表で注目する点
- 自己資本比率が低い
- 債務超過の状態
- 有利子負債(借入金や社債)が過大
損益計算書で注目する点
- 赤字が何年も続く
- 多額の赤字を計上している
キャッシュ・フロー計算書で注目する点
- 営業キャッシュ・フローがマイナス
- 現金同等物が有利子負債に比べて少ない
営業キャッシュ・フローがプラスで損益計算書が赤字の場合
企業によっては、損益計算書の営業損益が赤字でも、営業キャッシュ・フローがプラスというケースがあります。
📌 典型例
- 多額の設備投資を行い、減価償却費が膨らんだ結果、営業損益は赤字
- 減価償却費はキャッシュの流出を伴わないため、営業キャッシュ・フローはプラス
この場合、損益計算書だけを見ると業績が悪く見えるため株価が割安になることがあります。将来的に営業利益が黒字化すれば、大幅な株価上昇が期待できるケースもあります。
キャッシュ・フロー計算書に違和感を感じたら要注意
営業利益が黒字なのに営業キャッシュ・フローが大きくマイナスになっている場合は要注意です。
考えられる原因
- 売上急増による資金繰りのズレ
- 売上代金の回収が仕入れに追いつかず、一時的に営業CFがマイナス
- 成長中のIT企業や小売業でよく見られる
- 売掛金回収の遅延・在庫の売れ残り
- キャッシュの流れに影響し、将来的な損失につながる
- 粉飾決算
- 利益は出ているのに現金が流出している場合、利益の水増しの可能性
こうした違和感は、キャッシュ・フロー計算書を確認することで見えてきます。
理由が健全(売上増加など)でなければ、その銘柄は投資対象から外す判断も重要です。
まとめ
- キャッシュ・フロー計算書は単独では銘柄選定に使いにくい
- 安全性重視なら、貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書を併用する
- 営業キャッシュ・フローのプラス/マイナスは、企業の現金獲得力の強さを示す
- 損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の間に違和感があれば要注意
ポイント
キャッシュ・フロー計算書は企業の「現金の動き」を映す鏡です。数字の裏にある資金の実態を読み取り、安全性や成長性を判断する材料として活用しましょう。
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